── 砂浜に刻まれた伝説、今ふたたび。
ウェールズ南西部の海岸に広がるペンディン サンド(Pendine Sands)は、干潮時におよそ11キロメートルもの平坦で硬質な浜が現れ、自然が用意した直線のテストトラックとして知られています。1920年代、この地はスピード記録の聖地としてその名を轟かせ、四輪ではマルコム キャンベルが150mphの壁を破り、パリー トーマスが命を懸けて時速270kmを超える挑戦に臨みました。一方、モーターサイクルの世界でもペンディン サンドは重要な舞台となりました。1922年からは「ウェルシュTT(Welsh Tourist Trophy)」が開催され、モーターサイクルもまたこの地で砂を蹴り、風を裂きました。1927年には、ジョージ ブラフが自身のS.S.100で130.6mph(約210km/h)を記録し、当時のソロモーターサイクルとして世界最速の記録を樹立しました。その後も、ペンディン サンドは時代の最先端を走る者たちにとって特別な場所であり続けます。2018年にはゼフ アイゼンバーグがハヤブサを改造したマシンで時速320kmを突破し、モーターサイクルによる記録を更新しています。そんな場所に、ふたたびブラフシューペリアの名が響きます。ブランドがその精神と遺伝子を受け継ぎ現代に放つマシン、それがペンディン サンドレーサー。歴史への敬意と革新への情熱とを一身に背負い、時空を越えて甦ったこのモデルは、ただ速さを追い求めるだけでなく、挑戦することの尊さまでも体現。外観には、砂の記憶を纏ったような力強さと洗練が共存。高く跳ね上がったエキゾースト、幅広で剛性あるハンドルバー、そして精巧なアルミニウム製のタンクとシートユニット。光が触れるたび、シートユニットの造形が繊細な陰影をまとい、静謐な緊張感を生み出します。搭載されるのは、997cc 水冷DOHC 88度V型2気筒エンジン。最高出力102馬力、最大トルク87Nmを発揮し、未舗装の路面でも力強く、粘りのあるトルクを供給します。フレームには軽量かつ高剛性なチタン合金を採用し、Fior式ダブルウィッシュボーン フロントサスペンションが操縦安定性と俊敏な応答を両立します。ブレーキには、バルリンガー製のディスクを前後に装備。フロント19インチ、リア17インチのCNC削り出しホイールとともに、路面との対話を深める精密な足まわりを実現。フランス トゥールーズの工房にて、一台一台が熟練職人の手によってビスポークで仕立てられます。このモーターサイクルは歴史と革新が融合した芸術作品。所有する者の感性と哲学が反映され、走ることでその真価を発揮します。
ペンディン サンドに刻まれた伝説 ──
その記憶は、ペンディン サンドレーサーを通じて、今を駆ける者たちの心にふたたび息づきます。
| エンジン | |
|---|---|
| エンジン形式 | 997cc 水冷 DOHC 88°V ツイン 4 ストローク 各気筒 4 バルブ / チェーン+ギア複合カム駆動 |
| 最高出力 | 102 bhp(75 kW)/ 9600 rpm〈Euro 4〉 |
| 最大トルク | 87 Nm(64 lb-ft)/ 7300 rpm |
| 圧縮比 | 11 : 1 |
| 燃料供給方式 | 電子制御燃料噴射(Synerject ECU) 50 mm スロットルボディ × 2(各 1 インジェクター) |
| ギアボックス | 6 速 |
| クラッチ | 湿式多板クラッチ(油圧式) |
| 車体 | |
|---|---|
| フレーム | 削り出しチタンフレーム+チタン製サブフレーム |
| フロントサスペンション | アルミ削り出し Fior-タイプフォーク チタン製リンク式プリロード / リバウンド調整式モノショック(トラベル 120 mm) |
| リアサスペンション | アルミ鋳造スイングアーム(エンジン後部支点) プログレッシブリンク式モノショック(プリロード / リバウンド調整、トラベル 130 mm) |
| キャスター / トレール | 24.8° / 108 mm(フォークオフセット 38 mm) |
| フロントブレーキ | φ320 mm ステンレスディスク × 4 4 ピストン Beringer ラジアルキャリパー × 2 |
| リアブレーキ | φ230 mm ステンレスディスク × 1 2 ピストン Beringer ラジアルキャリパー × 1 |
| ホイール | アルミ削り出しホイール(16 本スポーク) |
| フロントタイヤ | 120/70 – 19″(リム幅 3.50″) |
| リアタイヤ | 170/60 – 17″(リム幅 4.5″) |
| 乾燥重量 / 配分 | 186 kg〈前後 50:50〉 |