自由の本質を、その身に纏う
── 研ぎ澄まされた造形、構造美として結実。ブラフシューペリア ロレンス
走る哲学── 名を継ぐ者。かつて「モーターサイクルのロールスロイス」と称された、伝説のモーターサイクルブランド、ブラフシューペリア。その系譜の中でも、ひときわ鮮烈な存在感を放つのが、ブラフシューペリア ロレンスです。その名は、英国の軍人にして文学者、冒険家としても知られるT.E.ロレンス、通称「アラビアのロレンス」への深い敬意から生まれたもの。彼が抱いた自由への渇望と美へのまなざしは、この車輌の設計思想と深く共鳴しています。S.S.100の機構哲学を継承し、現代技術と意匠設計を融合させて結晶したロレンスは、全世界でわずか188台のみの限定生産。その数字には、彼の生年「1888年」にちなんだ静かな意味が託されています。静かに意志を宿す構造体。存在そのものが語りかけてくる、孤高のモーターサイクル ── それが、ロレンスです。
ロレンスの姿は、機能の集合体にとどまりません。そこにあるのは、ひとつの信念。構造に詩を宿すという、ブラフシューペリアの哲学です。燃料タンクの造形に着想を与えたのは、古くより中東の遊牧民ベドウィンの戦士たちが帯びていた湾曲刀「ジャンビーヤ(ベドウィン ダガー)」 この短剣は、単なる武器ではなく、誇り、勇気、そして部族の結束を象徴する存在でした。1917年、アカバ攻略の折、T.E.ロレンスはアラブ軍指導者シャリーフ ナシールから銀装飾のジャンビーヤを授かります。それは、彼がアラブ世界において信頼と敬意を勝ち得た証であり、彼自身のアイデンティティを形成する象徴ともなりました。ロレンスがこの短剣を帯び、アラブの衣装を身にまとった姿は、彼の精神と世界観を如実に映し出しています。ロレンスという名を継ぐこの車輌は、その意匠に彼の記憶を刻み込みます。ジャンビーヤに宿る優美で張りつめた曲線は、軽量かつ高剛性なカーボンファイバーによってかたちとなり、静謐な力を放ちながら車体を包み込みます。それは、意匠と機能が交差する、現代のモーターサイクルにおける新たな造形言語です。車体構成には、航空機グレードのチタン合金やアルミニウム削り出しの部材を惜しみなく投入。中でも、フロントに採用されたFiorタイプのサスペンション構造は、走行性能と視覚的造形の両立という難題に対し、完璧な回答を提示しています。視線を走らせたその先に現れるのは、流線と硬質が交錯する構造の重奏。それは、ただ速さを追い求めるのではなく、「走る」という行為に精神性と物語を帯びさせるための設計。このマシンに触れる者は知るでしょう。ロレンスとは、走るための彫刻であり、意志を纏った構造であることを ──。
ブラフシューペリアのモーターサイクルは、量産という概念から最も遠い場所で生まれます。効率ではなく、信念と感性によってかたちづくられる、限られた者のための構造体です。そこに込められるのは、生産の論理ではなく、造形に向き合う人間の思想と誠実さ。フランス トゥールーズにあるブラフシューペリアのファクトリーには、設計が思想となり、素材が詩となる、現代の工藝が息づいています。最先端のCNCによって精密に削り出されたパーツが整然と並ぶその場で、溶接、研磨、塗装、革細工──すべての工程が、職人たちの確かな手によって一つひとつ丁寧に仕上げられていきます。車輌は、熟練の職人たちの手と目と息づかいによって整えられ、微細な違いと個性が与えられます。それは、機械では再現できない人の手による揺らぎであり、工業製品には決して宿り得ない、静かな深みをもった存在感。そこに注ぎ込まれるのは、数値に換算できるスペックだけではありません。一つひとつの部品に、技術と精神とが注がれ、組み上げられた後に浮かび上がるのは、数式では説明できない機能美。そしてその機能美こそが、使い手の感性に寄り添い、走りの中に独自の呼吸をもたらします。すべてのブラフシューペリアに通底するのは、完成された機械というよりも、完成へと向かい続ける思想の姿勢です。時間とともに磨かれ、使い手と響き合いながら、変化と深化を繰り返していくその姿は、機構でありながら生きた存在でもあります。それは、造形を超えて、ひとつの哲学がかたちを持ったもの──機械という形式に封じ込められた思想の器です。ロレンスもまた、その手業と思想の延長線上にあります。この車輌は、持つ者の人生に寄り添い、時を共に刻む存在です。そしていずれ、使い手の記憶とともに、またひとつ新たな物語となっていくのです。
それは、ひとりの人間への敬意にとどまらず、精神のあり方そのものを象徴しています。T.E.ロレンス(アラビアのロレンス)は、英国陸軍の将校であり、優れた文学者であり、そして、誰よりも自由を愛し、その思想を行動で貫いた孤高の人物でした。彼の人生は、国家や立場を超えた信義と美学、そして文化への深い敬意に満ちており、その精神は現代においてなお、多くの人の心を打ち続けています。彼が愛したモーターサイクル、ブラフシューペリア。その走行性能に、造形に、哲学に、深い共鳴を見出し、生涯で7台を所有したと言われています。その関係は単なる趣味や嗜好を超え、機構を通じた信頼と精神的連帯と呼ぶにふさわしいものでした。このモデルにロレンスという名が与えられたことは、単なる記念やオマージュではありません。彼の精神と思想を、かたちあるものとして今に継承するという明確な意志。走るための機械に、哲学と物語を刻む ──それが、ブラフシューペリアが掲げる静かな矜持です。ロレンスの人生と思想、そして彼とブラフシューペリアの深いつながりについては、以下の特集ページにて詳しくご紹介しています。この車輌の真価をより深く理解していただくために、ぜひご一読ください。
| エンジン | |
|---|---|
| エンジン形式 | 997cc 水冷 DOHC 88°V ツイン 4 ストローク 各気筒 4 バルブ / チェーン+ギア複合カム駆動 |
| 最高出力 | 102 bhp(75 kW)/ 9600 rpm〈Euro 4〉 |
| 最大トルク | 87 Nm(64 lb-ft)/ 7300 rpm |
| 圧縮比 | 11 : 1 |
| 燃料供給方式 | 電子制御燃料噴射(Synerject ECU) 50 mm スロットルボディ × 2(各 1 インジェクター) |
| ギアボックス | 6 速 |
| クラッチ | 湿式多板クラッチ(油圧式) |
| 車体 | |
|---|---|
| フレーム | 削り出しチタンフレーム+チタン製サブフレーム |
| フロントサスペンション | アルミ削り出し Fior-タイプフォーク チタン製リンク式プリロード / リバウンド調整式モノショック(トラベル 120 mm) |
| リアサスペンション | アルミ鋳造スイングアーム(エンジン後部支点) プログレッシブリンク式モノショック(プリロード / リバウンド調整、トラベル 130 mm) |
| キャスター / トレール | 24.6° / 108.3 mm(フォークオフセット 37.1 mm) |
| フロントブレーキ | φ320 mm ステンレスディスク × 4 4 ピストン Beringer ラジアルキャリパー × 2 |
| リアブレーキ | φ230 mm ステンレスディスク × 1 2 ピストン Beringer ラジアルキャリパー × 1 |
| ホイール | アルミ削り出しホイール(7 本スポーク) |
| フロントタイヤ | 120/70 – 19″(リム幅 3.50″) |
| リアタイヤ | 200/55 – 17″(リム幅 6.25″) |
| 乾燥重量 / 配分 | 200 kg〈前後 50:50〉 |
| 限定生産台数 | 188 台 |
| 希望小売価格 (消費税10%込) |
¥ 13,442,000 |
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