Richard Mille & Brough Superior
── 異なる頂が織りなす、異彩放つ構造体
時を刻む精緻な技と、速度を追い求める孤高の思想。交わることのない二つの軌跡が、ある瞬間、ひとつに重なった。世界は、その時、これまで耳にしたことのない、新たな存在の産声を聴くことになります。その声が具現化したモーターサイクルこそ、RMB01。スイスの山々とフランスのピレネー、壮麗な自然に抱かれたヨーロッパの時間の流れの中で、二つの異なる哲学が、悠久の時を超えて静かに邂逅しました。
ひとつは、リシャール ミル。極限の軽さ、研ぎ澄まされた構造美、そして他の追随を許さない圧倒的な存在感を纏う、世界屈指の時計メゾンです。その創造物は、もはや「時計」という言葉では括りきれません。F1マシンのシャシーに通ずる設計思想、航空宇宙産業で用いられるハイグレード素材、1000分の1秒単位の精緻な精度、数万Gの衝撃にも耐えうる驚異的な耐衝撃性能 ── それらすべてを包含した、まさに機械工芸の極致。その価値が数千万円とされるのは、決して誇張ではなく、技術への純粋な対価に他なりません。
そしてもうひとつは、ブラフシューペリア。1919年、英国で創業し、「アラビアのロレンス」ことT.E.ロレンスの愛機として伝説となったモーターサイクルブランドです。時を経て、フランスの地で新たな生命を吹き込まれた「モーターサイクル界のロールスロイス」と称されるこの孤高のブランドは、一切の妥協を拒み、工藝品の域にまで昇華された車輌を世に送り出し続けています。そこにあるのは、ただの乗り物ではありません。信念と造形が織りなす、唯一無二の美術作品が存在するのです。
このふたつの至高が、ただひとつの思想のもとに融合しました。量産を潔しとせず、数字では語り得ぬ真の価値を探求し続け、常に「本物とは何か」を問いかけてきた両者が、今、この場所で共鳴し合ったのです。2025年、古都ル・マン。その由緒あるクラシックサーキットにおいて、世界中の眼差しが注がれる中、RMB01は静かにその姿を現しました。その場に居合わせた者たちは、きっと胸の内で確信したことでしょう。この瞬間、モーターサイクルという機械が「時の哲学」と深く結びつき、これまでにない概念を纏って走り出し、新たな価値の物語を紡ぎ始めたのだと。RMB01は、まさに「走る工藝品」です。それは、手首の上でレースマシンと化す時計が、そのまま地上を駆け抜ける姿へと顕現した存在。車輌という構造体を借りながら、美と速度、時間と存在という永遠のテーマを語る、新たな物語 ── それこそが、RMB01なのです。生産台数、わずか150台。その一台一台に、リシャール ミルとブラフシューペリアというふたつの魂が、静かに、しかし濃密に封じ込められています。それは、限られた者だけに許される、時と速度の真の所有に他なりません。
RMB01は「組み立てる」のではなく、「仕立てあげる」ように生まれる存在です。この表現こそが、RMB01に脈々と流れる哲学、そして唯一無二の精神性を象徴しています。それは、効率と再現性を至上とする現代の工業生産とは決定的に異なる思想に基づいています。時間短縮や生産性の名のもとに均一化された製造ラインではなく、創造という行為が静謐に繰り返される、工房という名の緊張感に満ちた空間で生まれるのです。そこでは、精度と感性という、本来は交わらないはずの二つが張り詰めた空気の中でせめぎ合い、響き合います。各部品は驚くほどの精密さで設計されますが、RMB01の完成には、図面や数式では決して導き出せない「技術の判断」という名の直観が不可欠です。素材が放つかすかな表情、組み付けの瞬間に漂うわずかな兆し ── その一瞬の変化を読み取るのは、数値ではなく、職人の指先と感性。その手業こそが、RMB01を一台の工藝品へと昇華させていきます。チタニウム、カーボンファイバー、アルミニウム。それぞれが持つ異なる「呼吸」、張りやしなやかさ、硬度、振動伝達性。それらが緻密に組み合わさり、理論や計測では割り切れない揺らぎが立ち現れるとき、RMB01はただの機械ではなく、ひとつの「生命体」として息づきはじめます。そして、それを感じ取るのは、長年の経験によって研ぎ澄まされた職人の感性。彼らは、一枚の絹を扱うように、素材の「声なき声」に静かに耳を澄ませ、必要な圧力を、過不足なく、迷いなく加えていく。その技は、単なる機械製造の枠を超え、美学の領域にまで高められています。この工程において最も尊ばれるのは、効率でも速度でもありません。むしろ、工業的な論理では「非合理」とされるような手間と時間こそが、RMB01の品格と気配を育て上げます。数の論理に抗い、物質と精神が交わる刹那を形にする、合理の対極に息づく、職人たちの美学の結び目でしょう。精密であることと、美しいこと。RMB01の創造においては、この二つが明確に交差し、溶け合っています。数値化できぬ工程、定義不可能な技術、そして審美眼という名の感性が支配する場所で、RMB01は一つの「呼吸」を宿し、まるで作品のように、ゆっくりと、しかし確かにその姿を結んでいきます。技と美が交差する場所で生まれた、究極の仕立て。静謐なる創造の果てに立ち現れた、走るための芸術品。RMB01の誕生には、五年以上にわたる構想と開発の歳月が費やされました。その造形と機能は、数値流体力学(CFD)をはじめとする最先端の解析技術によって支えられ、見た目の美しさだけでなく空力性能の緻密な追求に裏打ちされたものです。シャシー構造にはカーボンファイバー製モノコックを中核とし、リアセクションには軽量アルミニウム製サブフレームを採用。この革新的な組み合わせが、軽量性と剛性、そして独創的なシルエットの両立を可能にしています。完成の瞬間、そこに佇むRMB01は、もはや「作られた」とは呼べません。それはむしろ、「育まれた」と形容すべき、命ある構造体。そこには、無数の部品ではなく、職人たちの知性、経験、誇り、そして沈黙の技術とでも呼ぶべき、継承されし技の記憶が、静かに、深く編み込まれています。
RMB01という車輌には、二つの世界が流れ込んでいます。ひとつは、モーターサイクルの歴史と技術を紡いできたブラフシューペリアの精緻な工藝。もうひとつは、時の本質を削り出してきたリシャール ミルの構造美学。異なる頂に立つ二つの存在が、互いの哲学を讃え合うように組み上げられたこのマシンは、表面的な共同開発という枠を超えたプロジェクト。異なる旋律が重なり合ってひとつの楽曲となるように、精緻な協奏として誕生した存在です。
視線を向けた瞬間、思わず息を呑む──インストゥルメントパネルに鎮座するそのメーターは、もはや単なる計器ではありません。スピードを示す小さな円環に注ぎ込まれたのは、リシャール ミルの時計哲学。針が指すのは速度でありながら、それはまるで、時間という抽象を彫刻した芸術作品のよう。静謐の中に漂う緊張、光の加減でその表情を変えるインデックス──そこにあるのは、機能の枠を超えた「意匠」であり、存在への「問い」そのものです。そしてリシャール ミルの存在は、メーターという一点にとどまりません。その美意識と哲学は、車輌全体の隅々にまで静かに浸透しています。
カーボンファイバー、チタニウム、ジュラルミン、そしてセラミック。航空宇宙の領域に属するそれらの素材は、軽さと剛性、耐久と美観という相反する特性を抱えながら、このマシンの骨格を構成しています。それぞれの素材が宿す声を聴き取り、対話するように導かれたその結晶は、「機能美」という言葉では触れきれない領域に踏み込んでいます。出来上がったその姿は、もはや「造形」と呼ぶにも収まりきれません。設計という思考と哲学が結晶化した「構築された思想」。美しさは装飾ではなく、機能と理性が交差した結果として、静かに輪郭をあらわしました。RMB01がまとうフォルムは、速度のための造形でありながら、沈黙のなかに研ぎ澄まされた意志を秘めています。それは、ただ風を切るための線ではなく、静けさと緊張がせめぎ合う構造そのもの。その緊密な密度は、ブラフシューペリアが継承してきたクラフツマンシップの系譜と、リシャール ミルが追い求めてきたタイムピースの本質が、深く響き合っているからこそ生まれるのです。
速度と時間、力と美、伝統と革新──交わるはずのないものたちが、このマシンの内側でひとつの旋律として編み上げられていく。それは、何秒で駆け抜けるかでは測れないモーターサイクル。いかなる価値で手に入れるかでは語れない時計。そのどちらにも属しながら、どちらの定義にも還元されない存在。
エンジンには、フランス国内で開発された997ccの水冷V型2気筒ユニットを搭載。アルミニウム削り出しのエンジンブロックは、130馬力という十分な出力と、精緻な振動制御性能を両立させています。この動力機構は、見た目の造形美と同様に、内に秘めた機能の精度と密度を物語っています。RMB01は、ふたつの頂点が交差し、静かに火花を散らすその一点にだけ生まれる、凝縮された思想の臨界点として生まれた、唯一無二の「結晶」です。
RMB01は、量産という概念から遠く離れた存在です。世界でわずか150台 ── それは、RMB01とともに紡がれる「物語の数」として刻まれた上限でもあります。一台ごとに異なる背景をまとい、それぞれの所有者の人生に寄り添いながら、唯一無二の時間を静かに編み上げていく。150の人生とともに刻まれる、それぞれの時。それはやがて、静かに響くひとつの詩となるでしょう。RMB01の一台一台には、職人たちの研ぎ澄まされた感性と、リシャール ミル、ブラフシューペリアという二つの魂が宿っています。それは、無機的なプロダクトではありません。惜しみない手間と時間、そして確かな美意識によって織り上げられた、ひとつの創造物です。すでに完成されたモノではなく、これからオーナーと共に歩み、完成へと向かう「プロセスそのもの」。150台のRMB01は、それぞれの人生と交差することで、新たな章を紡いでいく運命を帯びています。その物語は、あなたがRMB01を手にした瞬間から、静かに幕を開けます。ショーウィンドウの中では始まらず、ただ眺めているだけでは語り出すこともありません。所有し、走らせ、見つめ、触れる ──そうして向き合うことで、このマシンに込められた意志と響きが、あなたの内奥に確かに芽生えていくのです。RMB01とは、150通りの「時の編み手」に託された、未完の物語。それは、一つひとつの人生のなかで静かに息づいていく、かけがえのない存在なのです。
カラーモデル
深淵のごとき光沢を湛えたブルーが、RMB01の滑らかで有機的な造形美を静かに際立たせます。ボディパネルとフロントマッドガードには、闇夜に瞬く宝石のように輝く「ノクターナル サファイア」塗装を採用。それを受け止めるかのように、マットグレーのエアロキットと精緻に配されたグレーディテールが調和し、落ち着きの中に凛とした佇まいを演出します。エンジンカバー、クラッチマスター、ショックスプリングといった要所にあしらわれたブルーのアクセントが、全体に気品ある統一感をもたらし、造形と色彩のシンフォニーを奏でます。
カラーモデル
マットアンスラサイトグレーと鍛造カーボン──この二つの異なる素材感が織り成すのは、月夜に佇む神秘的な強さ。ボディ全体に広がる鍛造カーボンの複雑な繊維構造が、圧倒的な剛性と軽快さを同時に体現し、見る者に確かな存在感を刻み込みます。アクセントとして配されたオレンジが、精悍な表情に一筋の躍動感を添え、スポーティさと緊張感を絶妙なバランスで融合。ブラックアルマイト処理を施したハンドルバーおよびフレームが、全体の質感を引き締め、鋭く洗練されたシルエットを完成させます。
カラーモデル
静謐な白──マット仕上げのパールホワイトが、RMB01の複雑にして緻密な立体構造を一層際立たせます。軽量かつ高剛性を誇る鍛造カーボン製のフレームおよびエアロパーツは、視覚的にも明快な軽量感と未来的な洗練をもたらし、その佇まいに切れ味を与えています。随所に配された深紅のアクセントが、造形のリズムを引き締め、静と動のコントラストを際立たせながら、スポーティでありながらも知性を感じさせる印象を醸成。視覚的な軽やかさと密度のある構造美が調和したその姿は、まさに「パール オブ スピード」と呼ぶにふさわしい端正なる結晶です。
オプション
サーキット走行を前提として設計されたこのミニマルなシートは、特別仕様のインジェクションラバーを用いて精緻に成形されております。素材の表層には、微細かつ緻密なディテールが施されており、視覚的にも触覚的にも洗練された印象を与えます。そのうえ、レーザー加工によるテクスチャ仕上げが施されることで、光の角度によって繊細に表情を変える、深みある質感を実現しております。さらに、もう一つの選択肢として、丹念に仕立て上げたレザー仕上げのシートもご用意しております。こちらは、同様の意匠を纏ったレザーハンドルと組み合わせることで、上質な本革の風合いと、コントラストの効いたステッチワークが織りなす、クラシカルでありながらも現代的な趣を醸し出します。
| エンジン | |
|---|---|
| エンジン形式 | 997cc 水冷 DOHC 88°V ツイン 4 ストローク 各気筒 4 バルブ / チェーン+ギア複合カム駆動 |
| 最高出力 | 130 hp |
| ギアボックス | 6 速 |
| クラッチ | 湿式多板クラッチ(油圧式)APTC スリッパークラッチ搭載 |
| 車体 | |
|---|---|
| フレーム | CNC加工アルミニウム製フレーム(エンジンを構造材として使用)、カーボンファイバー製ボディ |
| フロントサスペンション | CNCアルミ削り出し Fior-タイプフォーク プリロードおよびリバウンド調整機能付きモノショック(トラベル量:85mm) |
| リアサスペンション | CNCアルミ削り出しスイングアーム(エンジン後部支点) プログレッシブリンク式モノショック(プリロード / リバウンド調整、トラベル 113 mm) |
| キャスター / トレール | 22.9° / 86.9 mm |
| フロントブレーキ | φ320mm ステンレスディスク x 2(4ピストンラジアルキャリパー x 2) |
| リアブレーキ | φ230mm ステンレスディスク x 1(2ピストンキャリパー x 1) |
| ホイール | CNC削り出しアルミ製リム&ハブ(組立式) |
| フロントタイヤ | 120/70 ZR17 58W(リム幅:3.50″) |
| リアタイヤ | 200/55 ZR17 78W(リム幅:6.25″) |
| 乾燥重量 / 配分 | |
| 限定生産台数 | 150 台 |
| 希望小売価格 (消費税10%込) |
¥ 42,545,800 |
ご注文 / お問い合わせ
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